写真の人こそ言葉が大事。誰にでもどこへでもアクセスできる切符。
コマーシャル・フォトからあらゆることを学んだ
僕は、パルコのポスターに衝撃を受けたあと、コマーシャル・フォトという雑誌で色んなことを学んだ。
インターネットもない当時、この雑誌は僕にとって超重要な情報源だった。バイブルだったと言ってもいい。それくらい読み込んでいた。
ページをめくれば、自分が目指す世界で活躍している憧れの人たちの名前を知ることができた。
クリエイターたちの名前だけでなく、電通や博報堂、旭通信社(現ADKホールディングス)に代表される、広告代理店などの企業の存在も、僕はコマーシャル・フォトで知っていった。
一般企業には広報部や宣伝部というものがあり、そこに広告代理店が入って、雑誌やテレビなどで見る広告は作られていくという、広告業界の全体像を僕は徐々に掴んでいった。
話は少しそれるけど、当時は必要な情報にアクセスするまでに、本当に手間と時間がかかった。
今ならググって1分でわかるようなことも、辞書をひいたり、目にする情報から推測したりして理解していくしかない。
僕が知りたかったことは、学校の先生に聞いてもわからないようなことばかりだったから、どうすれば必要な情報を手に入れることができるのか、そこがまず最初の関門だった。
だから、コマーシャル・フォトに出会ったときは、僕が探していたのはこれだ!って感動したのを覚えている。
写真の人こそ言葉を大事に
僕は最初から広告カメラマンを目指していたけれど、それはやはり最初に衝撃を受けたパルコのポスターの影響がとっても大きい。
僕の基準は、全てあのポスター。
特に、コピーが格好良かった。
「わが心のスーパースター」
たった一行で心を掴まれた。すごいインパクトだった。
この最高のコピーを書いたのは、サントリーのCMでも有名な長沢岳夫さんという人物だ。
この「コピーライター」という職業も、コマーシャル・フォトで知った。
広告には、コピーライターの他にも、グラフィックデザイナー、フォトグラファーなど、大勢のスタッフが関わっている。
トップには全体を指揮するアートディレクターがいるが、もうひとつその上に、クリエイティブディレクターいう役割が存在することがある。
そして、このクリエイティブディレクターをコピーライターが兼任していることがかなりあるのだ。
これはつまり、広告というビジュアルがメインの媒体でも、世界観を構築するのには、言葉が非常に大きな役割を持つことを意味している。
「はじめに言葉ありき」なんです。
コマーシャル・フォトからは、そんなことも学びました。
だから、写真を学ぼうとするとき、写真だけを勉強するだけでは足りない。
言葉も大事にしなければいけない。
もし、写真で仕事をするのだったら、言葉はより重要になる。
打ち合わせの段階では、当然写真は存在しないから、自分がどういうものを撮ろうとしているのか、言葉で伝えなければいけない。
イメージイラストなどが用意されることもあるけれど、最終的にイメージが共有できているかを確認するのは、結局言葉。
自分の中に言葉をたくさん持っている人は、写真の表現も豊かになる。
これは間違いない。
自分の中に湧き上がってきたものを言葉で表す能力は、写真をやる人間にとっては必須とも言える。
これは口が達者でなければいけないということではない。
口下手でも素晴らしい写真を撮る人はたくさんいる。
でも、そういう人は口から出る言葉が少なかったり、たどたどしかったりするだけで、頭の中ではきっと言葉が溢れていると思う。
言葉にならないからこそ写真で表現するという考えもあるけれど、
それでも言葉は大事にした方がいい。
いい写真を観ると、語りだすもの。
まとまった文章にはならなくとも、色んな言葉をこちらに投げかけてくる。
大切なのは言葉を大事にすること。
感じたものを言葉で表現すること。
相手に伝えようとする気持ちと、
言葉を尽くす努力。
僕は、伝えたい気持ちが強すぎて、ついついしゃべり過ぎて反省することもあるくらいです。
カメラがあれば、どこにでも行ける、誰にでも会える。
僕は、写真を撮るのが、好きです。
写真をとりまく世界も大好きです。
でも、僕が写真をやるのは、自分が楽しく生きたいから。
それが、まず一番。
そして、僕にとって、楽しく生きるのに向いている道具が、写真だからです。
僕が「写真ってすごい!便利!」って思うところは、
気になる人やモノを見つけたとき、「すみません。撮影させてもらえませんか?」と声をかければ済むこと。
こう書いてしまうと、変質者ちっくで誤解されそうだけど、当たらずとも遠からずなのかな。
だって、僕は街中で気になった女性に、声をかけて撮らせてもらったこともあるもの。
もちろん、ちゃんと丁寧に声をかけて、理由を説明して、不作法がないように気をつけました。
そんなときにも言葉はとても大切です。
自分が何者なのか。
どうしてあなたに興味を持ったのか。
写真を撮ってどうしたいのか。
それらを言葉を尽くして、相手が納得するまで説明をする。
相手がメリットを感じられるように説得する。
そして、撮ってもらえて良かったと思えるような写真を撮る。
とにかく写真をやっているだけで出会いが広がる。
誰かに会ったり、どこかへ行ったりする理由を自然に持つことができる。
魔法の切符みたいって、よく思う。
仕事となれば、より一層会える人の幅も行ける場所も広がる。
僕も、ずっと気になっていた人に会えたり、普通の人が入れないような場所へ行ったり、写真のおかげで貴重な経験がたくさんできた。
写真さえやっていれば、生きている人で会えない人はいないんじゃないかな。
本気で会おうとさえ思えば。
どんな重要人物でも、しかるべきところにアプローチをかけ、どうしても撮りたいと伝え、自分の撮り手としての実力と、撮影の必要性が認められれば、きっと撮れると思う。
絶対とは言えなくとも、可能性はかなりある。可能性って、あるだけで上等。
あとは動いて形にするだけ。
あ、ここでも言葉は大事な役割を担うね。
撮りたい相手を口説き落とすのは、それまでの実績と心からの言葉です。
人によって写真を撮る理由は色々だと思うし、なんだっていいと思う。
僕は、自分が楽しく生きるため。
好奇心旺盛で思い出大好きの僕には、ぴったりの道具。
写真があれば、会いたい人に会え、行きたいところへ行ける。
溢れるほどの思い出を一枚の写真に込めることができる。
それを人と分かち合うことができる。
写真はそういうことにすごく向いている。
写真は、必ずレンズの前にその瞬間の現実が置かれる。
常に、自分の外側の世界がそこにある。
シャッターを押すと、自分と世界との関わりがそこに映し出される。
だから、すごく面白い。
しみじみそう思う。
楽しく生きていくために必要なもの。
振り返ると、思い出が全部残ってる。
写真、すごい。
【こちらはYouTubeの動画をブログにしたものです。
元動画はこちら→https://www.youtube.com/watch?v=jUbNwO10j-o&t=1s
※ブログだけの話もありますので、ぜひ両方お楽しみください。】