LIFE LOG(ホネのひろいば)

【写真上達の基礎トレーニング】独学時代にやっていたカメラトレーニング法

 

今回は、独学の時代に、“写真集を観て分析”の他に、カメラに馴れるためにやってたトレーニング法についての話です。

写真の知識を深めるだけではなくて、その道具をしっかり身につけていこうと考え、けっこうな長い期間やり続けていました。

 

レーニング法詳細

 

まずは標準レンズと言われる50mmレンズ(35mmカメラの場合)の画角やパース感を自分の感覚に刷り込むというものです。

やることは簡単で、50mmしか使わないようにするわけですが、さらにカメラの設定にもある縛りを与えます。

 

 50mmレンズ

 フォーカス:2.5m

 絞り:5.6

 シャッター速度:1/250

 フイルム:Plus-X(公称感度125のモノクロフイルム)

 

この設定に固定して、なんでも撮影します。

もちろん2.5mを意識して撮ることが大事です。

人を入れ込んでの街撮りスナップなら、2.5mに人が入ったなぁ~と感じたら撮る。

50mmF5.62.5mなら、概ね2m3mの範囲が実用的なピント域(被写界深度)に入りますので、何を撮るにしても、それを考慮して自分の立ち位置を決めていくわけです。

 

様々な場面、様々な光、様々な時間帯。

昼間も夜間も。

絞りとシャッター速度の組み合わせは固定したままです。

 

現像も厳格に一定のプロセスを守ります。

 

 現像液:コダックD-7611希釈)

 現像タンク:ナイコール式ステンレスタンク(2本用)

 液温:20℃

 現像時間:630

 攪拌方法:当初は、理想的攪拌方法の模索を兼ねて様々な方法をその都度採用します。

 

と、こんな調子でフイルム現像を終えると、コンタクトプリント(ベタ焼き)をとっていきます。

 使用印画紙:フジブロWP 3号(レンジコート紙)

 印画紙用現像液:フジ パピトール

 光源:引伸機を使用(ヘッドの高さとレンズの絞りを一定に)

 ガラス板:ガラス屋さんで調達した厚手の強化ガラス

 

と、ここでも設定を保ちます。

露光時間は、あらかじめ露出計で適正露出を導き出して撮影されたネガを使い、

フイルムが乗っていない部分の黒が締まっていること。

フイルムの枠部分が適度なグレーで表現されること。

画面上のハイライトがしっかり黒く、ディープシャドウが抜けてしまう一歩手前。

といった辺りを基準に決めました。

 

この露光時間も、ずっとキープです。

 

さて、こうした方法で仕上がったコンタクトシートはどうなっているでしょう?

写真をやっている方なら、すぐ想像がつくと思いますが…

 

明るさが、見事にバラバラなんです。

カメラの設定を固定しているわけですから、当然の結果です。

ギュッと画面全体が黒っぽいアンダーなものから、白トビするほどにオーバーなものまで、様々な明るさのものが混在しています。

そんな中で、幾つかあるちょうど良さそうなカット選んで焼いてみます。すると、まぁ~キレイなバランスで焼けたりする。

 

この処理で、世の中がどんな光のバランスで照らされているかを実感したかった。

カメラのメーターや単体露出計の指示値(肌色を18%グレーに再現する露出)を追うのではなく、昼と夜、あるいは屋外と室内など様々な光の下で日常的に実感しているものを形にしたかった。

 

続けた結果、Plus-Xというフイルムの持つラチチュード(許容度、寛容度)が感覚的にわかってきます。

 

これらを通じてなにを得ようとしたのか

 

「自分自身の感覚に、判断材料となる基準を作ること」

 

50mmレンズの感じ:撮影内容に応じてレンズ選択をする際の基準づくり

2.5mの距離感:身体で感じる距離感覚の精度を上げる

露出:描きたいものを描くための設定基準

基準となるフイルムを持つこと

フイルム現像時にパーフォレーションムラを避ける理想的な攪拌法

 

ということなんです。

 

当時、かたくなにこれをやったのには、もう一つ裏事情があります。

特に撮りたいものがなかったんですよ。

というか、なにを撮っていいかわからなかったというべきか。

 

パルコのポスターにピンと来て、写真を仕事にすると決めた。

喰っていく方法を模索するということが先にあったので、そもそも写真とはなんぞやとか1ミリも考えていなかった。

ただ撮り手としてなにを強化していく必要があるかと考えた末の行動でした。

 

この時期にやっていた、写真集分析や絵画の展示を観に行ったりすることを通じて、感覚を育て、道具への理解を深めることで、写真に落とし込む作業のレベルが上がっていくだろうと思っていました。

 

結果はどうだったでしょう?

 

独立して35年、これでご飯が食べられているということもありますが、

やはり写真を考えているとき、あるいは現場で状況変化への対応を迫られるときなど、常にこのときやっていたことが判断の物差しとして機能しているように思います。

 

こうした考え方は、デジタルの時代になった今も、変わらずに続いています。

 

次回そのあたりを踏まえ、デジタルのワークフローについての話をしようと思います。

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【こちらは YouTubeの動画をテキスト化したものです。
元動画はこちら→https://youtu.be/XVTEUdByBfY